2014年12月07日

プラチナデータ

プラチナデータ (幻冬舎文庫) -
プラチナデータ (幻冬舎文庫) -

 犯人の検挙率を上げるために導入されたDNA捜査システムだったが、データベースの中に、持ち込まれたサンプルと一致したものは見つからなかった。システムに隠された秘密を知る開発者が殺され、真相を突きとめようとする神楽にシステムが示した犯人は神楽自身だった。東野圭吾さんが得意なテーマだと思ったので、期待して読み進めたが、行き止まりの脇道が多く(最後は回収されるが)、真犯人の動機や結末も腑に落ちないものだった。職務を放棄して真相を追う刑事やアメリカから派遣された女性など、理解しにくい行動を見せる脇役も不可解だった。

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2014年12月04日

自覚

自覚: 隠蔽捜査5.5 -
自覚: 隠蔽捜査5.5 -

 文庫で揃えたかった『隠蔽捜査シリーズ』だが『宰領』に続いて読みたいという気持ちを抑えられず、ハードカバー(古書)を購入してしまった。「隠蔽捜査、果断、疑心、初陣、転迷、宰領は、この自覚を楽しむための序章だったのではないか」と思う程、登場人物との再会が嬉しかった。

 久しぶりに読む今野敏さんの文章は、まるで竜崎署長の指示の様に無駄がなく、まるで8ビートのロックの様な疾走感があって気持ちが良い。あれほどまでに翻弄された畠山美奈子からの電話にもいつものように原理原則に基づいて冷静なアドバイスを下す竜崎が微笑ましい。

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2014年12月03日

あの頃の誰か

あの頃の誰か (光文社文庫 ひ 6-12) -
あの頃の誰か (光文社文庫 ひ 6-12) -

 東野圭吾さんご自身が巻末に収められている「あとがき」を「言い訳」と言うように、とりとめもなく集められた短編集。読者に「凄い」と言わせようとするような仕掛けに乏しく、強く印象に残る作品は無いが、そのためか、東野圭吾さんの素の人柄が表れているようで、それなりに楽しめる。

 この中で、私は「レイコと玲子」が好きだ。いっしょに収録されている「さよなら『お父さん』」が後に東野圭吾さんがブレークする切っ掛けとなる『秘密』に昇華したように、「レイコと玲子」も加筆修正して長編に仕立て替えして欲しいと思った。布団の中で読もう♪

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2014年11月29日

ナミヤ雑貨店の奇蹟

ナミヤ雑貨店の奇蹟 (角川文庫) -
ナミヤ雑貨店の奇蹟 (角川文庫) -

 外出の途中『禁断の魔術』を読み終えてしまった私は、次に読む本を求めて北千住駅の東武ブックスに寄り、25日に刊行されたばかりで台陳されていた『ナミヤ雑貨店の奇蹟』を手に入れた。ナミヤ雑貨店と丸光園という児童養護施設をめぐって繰り広げられる物語は「ナミヤ雑貨店のシャッターポストと牛乳箱を通じて二つの時制が繋がっている」という設定だ。

 それにしても東野圭吾さんは、こんなに心暖まる話も描けるのね♪失礼なことを思ってしまう程、良い本だった。もしかしたら私がこの本を手に入れられたのも『ナミヤ雑貨店の奇蹟』かもしれない…

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2014年11月26日

禁断の魔術

禁断の魔術―ガリレオ〈8〉 -
禁断の魔術―ガリレオ〈8〉 -

 読書メーター友から事前情報をいただいていた通り、猛射つが良かったです。正直、他の作品は、要らないと思います。その分、猛射つをもっと丁寧に描いて欲しかったです。特に気になったのは、事前に提示されていない本来なら伏線の様なものが、後から出て来るのは興ざめでした。頁数の制約もあるのでしょうが、ご本人か、編集者の方が気が付いたら、ちゃんと蒔いておいて欲しいし、既に刊行してしまった後でも、横山秀夫さんなら加筆修正するんじゃないかなぁ?でも前作に比べれば満足感はありました。次回も湯川先生を揺さぶる事件を期待します。

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2014年11月22日

パラレルワールド・ラブストーリー

パラレルワールド・ラブストーリー (講談社文庫) -
パラレルワールド・ラブストーリー (講談社文庫) -

『パラレルワールド・ラブストーリー』は、私が好きな『ブルータスの心臓・宿命・変身・分身』など1990年代に前半に刊行された作品に続き、『天空の蜂』と同じ1995年に刊行された。科学の進歩がもたらす悲劇をテーマにした作品の一つだと思う。主人公の現在を過去を行き来しながら進む話は、若干掴みにくく苛々させられるが、第九章 覚醒で明かされる真相に収斂するという構成だ。最後まで読むと中々良い物語なのだが、そこの至るまでのプロセスをミステリー調に仕立てたために、徐々に盛り上がるような演出になっていないのが惜しまれる。

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2014年11月19日

ダイイング・アイ

ダイイング・アイ (光文社文庫 ひ 6-11) -
ダイイング・アイ (光文社文庫 ひ 6-11) -

 冒頭の描写が気持ち悪く、他の本も読めなくなりそうだったが、立ち直って読み終えた。宮部みゆきさんの『レベル7』のように、自分についての記憶を失ってしまったわけではないが、ある事故の記憶を失ってしまった主人公と共に、読者も自分の記憶という謎を追いかけてゆく…ジョハリの窓ではないけれど、自分の記憶と他人の記憶の間にズレがあり、その原因が誰かの陰謀だとしたら…こんな恐ろしいことはないよね…ところで、東野圭吾さんは、失われた記憶を追い求める過程のサスペンスと交通事故の問題、どちらのテーマが書きたかったのかな?

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2014年11月15日

スナーク狩り

スナーク狩り (光文社文庫プレミアム) -
スナーク狩り (光文社文庫プレミアム) -

 録画されていた「TBSスペシャルドラマ企画 宮部みゆき4週連続 “極上”ミステリー」を観るための駆け込み読書第二弾は「女性が散弾銃を抱えて、かつて恋人だった男の披露宴会場に現れる」という物騒なもの。宮部みゆきさん得意の複数視点で描かれる物語りは、私の予想を裏切り続ける展開がスリリングで、まんべんなく蒔かれた伏線が、一つひとつ収斂してゆく過程が見事だった。どんなに真直ぐに生きている人にも、いや真直ぐに生きているからこそ、悪意は伝播しやすく、自らを破壊してしまうほど激しく燃え上がってしまうのかもしれない。

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2014年11月13日

レベル7

レベル7(セブン) (新潮文庫) -
レベル7(セブン) (新潮文庫) -

 『ソロモンの偽証』を読み終えた喪失感に苛まれていた私は、東野圭吾さんの作品に救いを求めたが、傷を完全に癒すことは出来なかった。そんな折、我家のハードディスクに「TBSスペシャルドラマ企画 宮部みゆき・4週連続 “極上”ミステリー」なるものが録画されていることが判明した!『理由』『スナーク狩り』『長い長い殺人』そして最も古い『レベル7』…24年の歳月を経て、私に発掘された作品は、当時の宮部さんが脳に汗をかきながら書きあげたと思われる素晴らしい作品だった。『ソロモンの偽証』の喪失感を感じている未読の方は是非!

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2014年11月07日

虚像の道化師

虚像の道化師 ガリレオ 7 -
虚像の道化師 ガリレオ 7 -

 私には、分からないことがある。登場人物が自分の視点で語っている部分があるのに、登場人物の行動が隠されているという描写だ。私は、これは、NGだと思うのだが、東野圭吾さんの小説を読んでいると、時々このような場面が出てくる。当然のことであるが、読者である私は騙されて、その謎を追うことになってしまうのだ。この様な表現は、映像では全く問題ないことから(カメラは基本的に神視点だから)、私の理解では、この物語りも、映像化されることを強く意識して作られたというものだ。私はタブーだと思うのだけれども、皆さんの評価はいかに?

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2013年09月16日

名もなき毒

名もなき毒 (文春文庫) -
名もなき毒 (文春文庫) -

 同名のドラマの原作で、会社員・杉村三郎を主人公とするシリーズの第二作。ドラマの前半は第一作の『誰か』なので、ドラマを切欠に読もうと思った人は『誰か』から読まれることを薦める。さて、この『名もなき毒』だが、些細な不満もないわけではない。宮部みゆきさんは、登場人物に解釈をさせ、出来事の意味を示唆することが多いと思うのだが、私としては、奈良和子が自殺した理由が釈然としないことや、外立君が犯した殺人が、無差別だったのか、それとも古屋明俊氏を狙ったものだったのかが良くわからなかった。それでも良いのかもしれないが…

 「奈良和子の自殺は、単純に、奈良和子が犯人である可能性を示唆し、読者を惑わす手段だったのか、読者の古屋暁子に対する嫌悪感を募らせるためのものだったのか?」もちろん物語を楽しんでいる時は、こんなこと考えていないのですが、しばらくすると著者の意図が気になってしかたがないのです。

 改めて『名もなき毒』を手にとって、宮部みゆきさんが、杉村さんに託した素敵な想いを発見しました。「人は皆、幸せの最中にあるよりも、これから幸せがやってくるという確信と期待に満ちたひと時こそ望むものではあるまいか。」というものです。そうですよね。「幸せがやってくるという確信と期待に満ちている時」人は、逞しく生きられるし、人に怒りをぶつけることもないわけです。人々が「幸せがやってくるという確信と期待」を持てる社会にしたいですね。

 原作では、外立君、秋山さん、杉村さんを乗せて走り去るタクシーを追う、萩原社長の様子は、あっさりとしているが、ドラマは、でんでんさんの演技が素晴らしくテレビの画面が霞んだことを思い出した…

 改めて読むと宮部みゆきさんは、やっぱり凄いですね。外立君が源田いずみに語りかける〜秋山さんが杉村さんを押さえるまでのくだりは、映像で観たことがあるからかもしれないが、素晴らしい描写力だと思います。

 杉村三郎が事件を解決する過程を辿ると、名探偵の条件とは、事実から推理する力や心理を分析する力では無くて、真相を知りたいという探究心なのではないかと思います。

 痛みを共有することは難しいかもしれませんね。痛みを共有するためには、相手の痛みを自分自身の境遇に置き換える必要があります。それは、思考ですから、推察するという表現が適切だと思います。2006年『白夜行』がドラマ化された時に東野圭吾さんの作品を読んだ後、しばらく小説を読んでいなかったんですが、昨年の7月から半年間小説を読んできて、今では、「小説家とは、人の心を描写する画家なのではないのか?」と思う程に嵌っています。

 言葉だけの世界って、不完全だと思うんですよね。でも、だからこそ、著者と読者の共同作業が成立すると思うんです。読者の中で、著者が予想もしなかったキャラクターが完成し、物語が生成される。それが、小説の素晴らしさなのだと思います。そして、その小説の世界に一人でも多くの読者を招き入れるために、ドラマや映画が何らかの役割を果たしてくれることを願います。

 私が久しぶりにミステリーの世界に帰ってこれたのは、昨年の7月にNHKによってドラマ化された池井戸潤さんの『七つの会議』を観たのが切欠だからです。この『名もなき毒』も『半沢直樹シリーズ』も『隠蔽捜査』も、比較的原作に忠実で、映像化によるメリットも活かされていますし、俳優さん達も熱演しているので好感を持っています。

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